九谷焼のできるまで

採石−粉砕−坏土−成形−素焼−下絵付−施釉−本窯−上絵窯−錦窯−完成


採 石



石川県小松市花坂山で採石される陶石は、高熱にあっても形状をくずさない耐火性と、成形に不可欠な粘り気のある可塑性(かそせい)を兼ね備えています。



粉砕(ふんさい)− 坏土(はいど)



九谷焼の原料となる陶石を粉末状になるまで砕き、水をたたえた水簸槽に陶土を加えて混入し、十分に攪拌する。何種類かの陶石と陶土が水の中でよく混ざり合った後、水槽に沈殿した粒子の細かい粘土状の土だけを集めて「坏土」ができあがる。九谷焼の場合、とかく色絵付けの良否に目が向けられがちだが、「九谷の美しさは坏土に始まる」と言われるほど重要な工程でもある。

成形素焼き



空気を追い出すように練り上げた坏土を成形して器をかたち造る。土練り3年、ロクロ6年と言われるほどに長年の経験と技術を要する工程でもあり、主にロクロを使って一つひとつ手作りすることの多い九谷焼では重要な作業段階となる。手のひらや指先を器用に操り、クルクルと回るロクロ上の土の塊をどんな形にも変えてしまう作業は、器造りの真髄、土に命が宿ったかのような様は圧巻である。成形した素地を半乾きにし、ゆがみなどを修正して仕上げ削り、形が整えられた素地を再び乾燥し800〜900度で「素焼き」が行われる。

下絵付け − 施釉(せゆ)− 本窯(ほんがま)



素焼きが終わった素地に、染め付け呉須を使って描く下絵付けを施し、釉薬をかけて1300度前後の高温で一昼夜近くかけて焼き上げる「本窯」と呼ばれるものである。釉薬をかけて焼くのは作品の汚れを防ぎ、表面をなめらかにするばかりでなく「施釉」によって素地に艶を与え、かつ堅牢にするためである。

上絵付け − 上絵窯 − 錦窯(金窯)− 完成



光沢を得た素地は、独特の「五彩絵の具」を用い九谷焼の命とも言える絵付けが施される。描画の高い技術と優れた色彩感覚を駆使して絵付けされた素地は、再び「上絵窯」と呼ばれる焼成が繰り返される。絵付けが整えられた素地には、金彩、銀彩が施されるものもある。金箔、銀箔を使ってより華やかに描き加えられ、最後の化粧がなされた後、幾度となく繰り返される焼成の最終段階である「錦窯」に入れて焼きあげられる。この焼きにより絵の具は一層の色彩を放つまでに至り、深い色合いを有する九谷焼ができあがる。

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